チャップリンの作品集④
またまたチャップリンの映画のお話です。
後期の長編映画に目がいきがちですが、初期の短編映画もしっかりと面白いです。
機会があったら、ぜひご覧ください。
それでは、前回からの続きです。
キーストン社をやめることになったチャップリン。
その理由は、社長のマック・セネットよりも高額な給料を要求したためと言われています。
次に来たのがエッサネイ社という映画会社。
キーストン社では10分前後の作品が多かったのですが、こちらでは20分前後の作品を制作するようになっていきます。
1915年 チャップリンの役者 HIS NEW JOB
エッサネイ社に来てから最初の作品。
設定は映画の撮影所という今までにもあった設定だが、一番違うのはテンポでした。
キーストン社時代は、良くも悪くもスピード感があり、考えさせる暇も無いようなアップテンポでドタバタが進んでいたのに対し、この作品では一場面一場面を以前よりもゆったりと見せています。
最後はドタバタになるのだが、前半に絡んでいた役者さんとの関係性でドタバタが巻き起こり、関係ない人物が出てきて、賑やかにコメディを展開するという訳ではない。
まだ一つの作品を見ただけなので、なんとも言えないが、ドタバタ喜劇ではありますが、少し落ち着いた作品の印象です。
見どころはベン・ターピンという人気コメディアンとの共演です。
ベンの最後の顔芸は面白いですし、チャップリンとの絡みも悪くない感じです。
チャップリンの動きはかわいらしくて面白い。
たばこや帽子を使ったギャグや板を使ったスラップスティックは、必見ですね。
1915年 酔いどれ2人組 A NIGHT OUT
タイトルの通り2人の酔っ払いの作品。
チャップリンの相棒は前作に引き続きベン・ターピン。
前作よりも動きがあっていて、コミカル度が増している。
ベンの顔芸はもちろんだが、動きも面白いと再認識。
そして、女優としてその後のあらゆるチャップリン映画に8年間出演するエドナが登場する。
物語は酒場からレストラン、ホテル①、ホテル②へと移っていくドタバタ喜劇。
場所は変わっても登場人物の人間関係が続きていきストーリーが展開されていく。
だが、この作品の見どころは何と言ってもチャップリンの酔った演技。
さまざまなパターンや状況での良い方を見せてくれる。これぞ酔っ払いの見本という演技で、これから酔いの演技をしたい方はぜひ、見て頂きたいのと同時に、きっとこれまでに日本のさまざまなコメディアンが真似してきたのだろうと感じる。
不条理だと感じるギャグも酔っ払いの演技力が高いので笑いへつながっていくので凄い。
1915年 チャップリンの拳闘 THE CHAMPION
映画「ロッキー」の元となったと言われている作品。
犬とボクシングと浮浪者のチャップリン。
チャップリン映画の名作にはこれらの要素がでてくることがあります。
前作までのドタバタにボクシングという設定が加わり見ごたえのある作品になっています。
ボクシングの中に登場する物やシュチュエーションをさまざまなギャグに変えていきます。
ボクシングと体を使ったギャグは相性がすごく良いようです。
見どころはボクシングの試合をしているチャップリン。
前作の酔っ払い役にもしびれましたが、今回のコミカルに戦っているシーンもまた見事です。
エッサネイ社になり、上演時間も長くなったことから、じっくりとチャップリンのギャグを楽しめるようになっているのも効果的に働いています。
1915年 アルコール先生 公園の巻 IN THE PARK
キーストン社時代に制作した『恋の20分間』をリメイクした作品。
ロケ場所はよくある公園。
その場で起こるドタバタ劇かと思いきや、ひとうのバッグを中心に物語が展開していく。
多少ストーリーに強引なものも見られるものの、ひとつひとつのチャップリンの動きがやはり面白い。
スティックの使い方なんて最高ですね。
公園にチャップリンが現れるだけで、トラブルと笑いが巻き起こっていきます。
1915年チャップリンの駆け落ち THE JITNEY ELOOPEMENT
チャップリンが好きだった大富豪の娘のエドナが伯爵と結婚することになってしまういうシェークスピア劇のような恋のお話。
見どころは2つ。
伯爵になリすまし料理を食べるチャップリンの不作法なところがまず一つ。
もう一つは最後に登場するカーチェイス。
家から公園へと話が展開して、公園で警察官と追っかけっこをして池に落ちて終わるというパターンが多かったが、今回はさらに車に乗って追いかけっこをするという展開に発展している。
作品自体が、前半がゆったりのテンポで進んでいき、後半にかけて早回しの技術を使ったり、展開のスケールも大きくなっていき非常に見ごたえのある作品になっていった印象でした。
1915年 チャップリンの失恋 THE TRAMP
ペーソスコメディ。
浮浪者のチャップリンがエドナに恋をするが、失恋してしまう「男はつらいよ」のような物語。
前半は、これまで行ってきたドタバタ劇で展開されるが最後に哀愁のある話が待っていると思うと、前半のギャグ達もいつもよりも高尚に感じられる。
18分の短編映画ながら、ストーリーもしっかりしていて見やすい。
今後のチャップリンの作品にしっかりと繋がっていくような映画。
単純なドタバタコメディから一歩進んで、心情をも表現する手法に入っていきました。
最後の後ろ姿は、哀愁そのもので、有名なシーンです。
まとめ
エッサネイ社へとやってきたチャップリン。
始めのころは、キーストン社ばりのドタバタ劇を展開していたが、徐々にテンポも落としていき、一つひとつのギャグをしっかりと見せて、それ自体に意味を持たせていくような手法に代わってきつつあるイメージ。