チャップリンの作品集⑤
本日は、エッサネイ社の後半の映画作品をご紹介していきます。
今後のチャップリンの礎となるような作品も出てきますので、機会がありましたらご覧くださいませ。
1915年 アルコール先生海水浴の巻 THE TRAMP
設定が海水浴場というところで見た目に新鮮な作品。
喧嘩をしたり女性を追いかけたりと、内容も展開も初期のチャップリンの頃のような作品。
帽子のギャグなど新しい要素もあり、動きがダイナミックでギャグが分かりやすい印象。
単純に面白い作品でした。
1915年 仕事 WORK
壁職人の見習いの設定のチャップリン。
ドタバタとしたギャグが中心のコメディ作品。
冒頭のギャグシーンのリアカーで坂道を上っていく場面は、後のローレル&ハーディの「極楽ピアノ騒動(1932年)」に重なります。
以前に紹介した「チャップリンのパン屋」にも似た内容。
最後のドタバタの展開も「パン屋」に似ている。
壁紙職人ということでノリを使ったギャグがふんだんに用いられている。
チャップリンがソロでノリと格闘するシーンはまさにクラウン的なギャグで見ものです。
威張っている人がやられたり、お金持ちの家がぐちゃぐちゃになったりする展開は何故かいつもよりも笑える気がする。
どこか心がスッとするような作品。
1915年 チャップリンの女装 A WOMAN
以前に紹介した「忙しい一日」、「男か女か」についで3作目の女装作品。
相変わらずチャップリンの女装は美人。
というか、ヒゲがないチャップリンは男前なので、女装しても映えますね。
女装も貴重な姿ですがチャップリンのズボンを脱がされてパンツで走り回る姿もなんだか新鮮です。
ドタバタコメディの中に、ちょっとしたストーリーもあって見ごたえのある作品でした。
1915年 チャップリンの清掃係 THE BANK
個人的にはかなり好きな作品のひとつです。
キャラクター設定とストーリーが見事にマッチしています。
前半は銀行の清掃係という設定を活かしたギャグが満載。
銀行を風刺した場面もあり、作品の質を高めています。
綺麗でなきゃいけない銀行を汚していくのは痛快です。
途中からチャップリンの恋物語に変わっていきます。
そして銀行強盗の話になり勧善懲悪ヒーローの物語になって行きます。
大活躍するチャップリンは見ていて気持ちがいいです。
最後のオチは賛否あるかもしれませんが、当時からこのようなオチが使われていたのかと考えるとチャップリンのすごさを感じます。
お花の使い方もおしゃれで純愛ということもあり綺麗な印象を持つ作品です。
恋するチャップリンの動きも可愛い。
喧嘩するチャップリンの動きも素敵。
かなり、高い身体表現を身につけているなあと感じました。
1915年 チャップリンの船乗り生活 SHANGHAIED
前作に引き続き勧善懲悪のお話。
船を舞台にした作品で揺れる船をうまく生かしたギャグがたくさんありました。
またクレーンを使ったギャグもダイナミックで、人がガンガン海に落ちていき、面白いです。
この辺りは初期のキーストンコメディを彷彿とさせますね。
揺れる船を表現するためにカメラを揺らしたりしていますが本当に船の中にいるようで見てるだけで酔ってしまいます。
1915年 チャップリンの寄席見物 A NIGHT IN THE SHOW
チャップリンが一人二役(チャーリーとローディ)を演じている珍しい作品。
単純に見た目で笑うことができる楽しく賑やかな作品。
二人のチャップリンが、舞台に乱入したり役者に向かって物を投げたり、ステージを台無しにしていく様は笑えます。
細かいギャグから大きなギャグまでたくさんの笑いの要素が入っています。
1915年 その日暮らし LIFE
制作が遅れて評判を気にし公開を取りやめた未完の作品。
チャップリンのボーダーのシャツが少し新鮮。安宿を舞台にした作品で、なんだか哀愁を感じさせる。
後の「キッド」にも通じる作品。
まとめ
初期の映画作品は、単純なギャグの積み重ねでした。
今回の作品たちは、
「設定をつけて、その中で表現できるギャグを演じて、そしてただ笑えるだけでなくストーリーがある」
そんな感じになっています。
後の大ヒットを記録した長編映画にも繋がっていくような製作のやり方であり、チャップリンの映画が徐々にできあがっていくのを感じます。
チャップリンの映画の理解を深めるためには、この時代の映画を見ておくのも良いと感じました。
まだチャップリンが映画に関わり始めて1年半くらいですが、この成長率は異常ですね。